俳優の窪田正孝さん主演の映画「東京喰種 トーキョーグール【S】」(川崎拓也監督、平牧和彦監督、公開中)で、ヒロインの霧嶋董香(トーカ)を演じている女優の山本舞香さん。トーカは、人間を食らう喰種(グール)として高い攻撃能力を持ち、主人公・カネキの師匠的な役割を担い、山本さん自身も物語のクライマックスとなるシーンでは、月山習役の松田翔太さんと激しい立ち回りを披露。長尺による激しいバトルを繰り広げていて、そのたたずまいは見ている者を魅了する。

 山本さんといえば、本作をはじめ、6月に公開された映画「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」、放送中の連続ドラマ「スカム」(TBS・MBSほか)など、ここ最近は映画、ドラマに引っ張りだこの女優だ。映画初主演となった「桜ノ雨」(2016年)では、内気で何の取りえもないと思っている女子高生が、未来に一歩踏み出すまでの葛藤を繊細に演じていたが、本人はインタビューで「私は内気ではないですよ。言いたいことははっきり言います」と笑っていたように、最近はやや勝ち気で“強め”な役を演じることが多い。

 中でも、特筆すべきは、「東京喰種 トーキョーグール【S】」でも見せている身体能力の高さに伴う動きと、立ち姿の存在感だ。小学校1年から中学3年生まで空手を習い、黒帯であることは知られているが、華奢(きゃしゃ)で、身長もそれほど高くないものの、スッと立って相手に向きあう姿勢の良さは、非常に目を引く。本作の永江智大プロデューサーも、「可憐(かれん)さと強さのバランスが、トーカにぴったりだった」と絶賛していたが、トーカの特徴に立ち姿だけで説得力を持たせるのは、山本さんの身体的な特性が大きく作用しているからだろう。

 本作以外にも、山本さんのこうした特性が生かされている作品は実は多い。2018年に放送された連続ドラマ「チア☆ダン」(TBS系)では、一匹狼で不登校だった女子高生・柴田茉希を演じ、クールで、笑顔をなかなか見せないが、ダンスへの思いは強く、仲間思いの一面を見せるなど、多面的にキャラクターを表現。一人黙々とダンスを踊る姿はキレがあり、説明的な描写を過度にすることなく、チームの中での立ち位置も容易に想像ができた。

 さらに、2018年公開の映画「恋は雨上がりのように」では、小松菜奈さん扮(ふん)する天才スプリンター・あきらに対して、後輩ながらもライバル心を燃やす他校の生徒・みずきを演じたが、ここでも凛(りん)としたたたずまいで、あきらに詰め寄り壁ドン(!?)するシーンなど、動きや立ち姿で、みずきというキャラクターに説得力を与えた。

 続けて公開された「SUNNY 強い気持ち・強い愛」でも、コギャルグループ「SUNNY」のリーダー・芹香として、広瀬すずさんや池田エライザさんなどそうそうたるメンバーの中、腕を組んで立つ姿だけでリーダーとしての圧倒的な存在感を示した。また「東京喰種 トーキョーグール【S】」でも共演している窪田さんが主演を務めた“月9”ドラマ「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(フジテレビ系)では、右肩痛に悩まされる女性バンドのギタリスト・坂元美月に扮し、大きな動きのあるシーンはそこまで多くなかったが、劇中、ギターを弾く姿勢も背筋が伸び、非常にさまになっていた。

 作品や演出する人間によって、俳優のどの部分を重視するかは違うだろう。そんな中、「東京喰種 トーキョーグール【S】」のようなアクションを伴う作品はもちろんだが、そうではなくても「身体能力の高さ」を魅力的な俳優の条件に挙げる人は多い。映画「斬。」などでメガホンをとった塚本晋也監督はインタビューで、「心が大事で、身体をそれより下と位置付ける人がいるが、僕は身体がまずありきと思っています」と語っていたが、体全体を通した表現力という意味では、山本さんの身体能力に裏付けされた姿勢の良さや立ち姿は、他の俳優と一線を画す大きな特長と言えるだろう。今後とも彼女の身体能力は大きな武器になっていくのではないだろうか。(磯部正和/フリーライター)