第91回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞したアニメ「スパイダーマン:スパイダーバース」(ボブ・ペルシケッティ監督、ピーター・ラムジー監督、ロドニー・ロスマン監督)。ブルーレイディスク&DVDが8月7日に発売される。日本アニメの影響と思われる表現が随所に見られ、日本のアニメ・クリエーター、ファンの話題になった。スタッフロールを見ると、さまざまな国、地域のクリエーターが集結していて、日本人のクリエーターも参加している。その一人がCGアニメーターとして参加した若杉遼さんだ。た日本アニメの影響とは……若杉さんに聞いた。

 ◇日本のアニメ的な動きを 「やられた!」の声は複雑

 「スパイダーバース」は、時空がゆがめられたことで、異なる次元で活躍するスパイダーマンたちが集結。新生スパイダーマンとして活躍する主人公の中学生のマイルス・モラレス、マイルスを導く師匠のピーター・B・パーカー、女性スパイダーマンのグウェン・ステイシーらが活躍する。

 若杉さんは、東京工科大学を経て米国の美術大学を卒業。ピクサー・アニメーション・スタジオでCGアニメーターとしてキャリアをスタート。2015年からソニー・ピクチャーズ・イメージワークスに所属し、「アングリーバード」「スマーフ スマーフェットと秘密の大冒険」などに参加してきた。「スパイダーバース」では、動き、表情などの表現を担当した。

 「スパイダーバース」は、日本アニメを意識して作られているように見えるが? 若杉さんは「受けています」と即答する。製作にあたりスタッフが参考にした資料の中には「『NARUTO』など日本のアニメが結構ありました」という。特に参考したのは「動き」だった。

 「アクションが見どころのアニメなので、動きの部分に影響を受けています。米国のアニメは基本的に1秒24コマですが、『スパイダーバース』はベースが12コマなんです。ちょっとカクカクしている。このカクカクが格好よく、やりたかったことです。米国のアニメはリアルな演技が多いのですが、日本のアニメ的な動きをやりたかったんです」

 「スパイダーバース」を見た日本のアニメ関係者からは「やられた!」という声もあった。日本のアニメが進化させてきた表現に影響を受けながら、新しい表現に挑戦した「スパイダーバース」に感動しつつ、嫉妬も入り交じった複雑な感情があったのかもしれない。

 若杉さんは「勝負したのではなく、リスペクトがあり、日本のアニメが好き!というピュアな気持ちで作ったんです。米国のクリエーターは日本のアニメ好きが多い。だから『やられた!』というのは複雑な気持ちになりますね……」と話す。

 ◇CG進化で原点回帰? 手描きに近づいていく…

 日本のアニメと米国のアニメは、表現以外にも違いがある。若杉さんは「米国のアニメは基本的に子供向け。ファミリー、キッズというジャンルになります。分かりやすさが根底にある」と説明。日本のアニメは子供向けだけでなく、大人のアニメファンが楽しむ深夜アニメも一つのジャンルになっていて、海外にも日本の大人向けアニメのファンは多い。

 一方で、「スパイダーバース」は子供だけでなく大人も楽しめるメジャー映画に仕上げた。若杉さんが「これまでの米国のキッズ、ファミリー向けアニメよりも、ターゲットが上になるようにしたところはあります。自分自身がこれまで作ってきたアニメは、分かりやすさ、可愛さを考えていたけど、初めて格好よさを考えた。スタイルが独特なので、どれくらい受け入れられるか不安もあったのですが、反響が大きく、すごいことなんだ……と実感しています」と話すように、エポックメイキングな作品になった。

 CGアニメは常に進化している。「スパイダーバース」もCGの進化によって実現した表現も多いという。米国の第一線で活躍する若杉さんは今後のCG、表現の進化についてどのように考えているのだろうか?

 「『スパイダーバース』でもパンチした時の残像が手描きだったり、顔のしわが手描きだったりします。これまで、手描きだったら簡単にできることがCGでは時間が掛かって、もどかしく感じることもあったのですが、CGと手描きを合わせることができるようになった。できることが増えて、手描きに近づいていく……。原点回帰に向かっていくのかもしれません」

 CGが更に進化し、今後、日本、米国のクリエーターが刺激を受け合って、「スパイダーバース」のような革新性なアニメが続々と生まれる……。そんな未来もあるかもしれない。

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